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東京地方裁判所 昭和36年(レ)336号 判決 1964年2月01日

控訴人(附帯被控訴人) 松尾きわ

被控訴人(附帯控訴人) 高橋良雄 外一名

主文

本件控訴、附帯控訴をともに棄却する。

当審における訴訟費用は、すべて控訴人の負担とする。

原判決の主文第三項に「原告その余の請求を棄却する。」

との一項を加え、第三項を第四項とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。被控訴人らの請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人らの負担とする。」との判決及び附帯控訴につき控訴棄却の判決を求め、被控訴人ら代理人は控訴棄却の判決を求め、附帯控訴として「(1) 原判決中被控訴人ら敗訴の部分を取り消す。(2) 被控訴人らが東京都品川区豊町五丁目一三五番の三宅地七〇坪七合八勺(以下、乙地という。)のうち東南側約一三坪五勺(原判決添付図面表示の(1) (2) (3) (4) (1) の各点を連結した範囲の土地)につき、通行権を有することを確認する。(3) 控訴人は被控訴人らに対し右地上にある長さ約一九尺一寸四分の板塀及びバラツク建、物置のうちその東南側の壁より左へ間口約三尺、奥行約九尺の部分(この建坪約七合五勺)を収去し、かつ、右土地内に工作物を築造したり、障害物をおいたりなど被控訴人らの通行の妨げとなるような行為をしてはならない。(4) 訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」との判決並びに(3) につき仮執行の宣言を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用、認否は、双方代理人において次のとおり陳述し、証拠を提出、援用、認否したほか原判決の事実欄記載のとおりであるから、これを引用する。

控訴代理人は、昭和二四年二月、当時国の所有に属していた品川区豊町五丁目一三五番の一の宅地から、同番の四宅地六〇坪一合一勺(以下、甲地という。)を被控訴人高橋良雄において、同番の三宅地七〇坪七合八勺(以下、乙地という。)を控訴人の夫松尾秀二において、それぞれ、分割により、国から払下げを受けその所有権を取得したところ、その際、乙地の東南側部分に甲地より南西公道に通ずる幅員三、三尺ないし四尺の通路があつたが、この通路は同番の六宅地三一坪九合八勺(以下、丙地という。)と境を接し、丙地のうち乙地との境界線に沿つて幅員一、五尺の空地が右通路と合して甲地のための通路となつていた。丙地は甲地及び乙地と同様昭和二四年二月八日右一三五番の一の宅地から分割により訴外西山七五郎において払下げを受けた同番の五宅地六一坪九合八勺の一部で、訴外大橋昭夫が昭和三二年一〇月一〇日右西山からさらに分割により譲り受け現在に至つている。従つて、甲地は乙地及び丙地が分割譲渡されたことによつて公道に通じない土地となつたものであるから、甲地に仮りに右の通路がなかつたならば被控訴人らは、民法の規定により、丙地の一部についても囲繞地通行権を有するところ、前述のように丙地のうち幅員一、五尺の部分については、被控訴人らがこの部分を通路として使用することを所有者大橋昭夫において許容しており、また被控訴人らは現に乙地を幅員三、三尺ないし四尺通路として使用することを認められており、丙部分を合せて、幅員合計四、八尺ないし、五、五尺の範囲が乙地のための通路として使用されているのであるから、現状のまゝで被控訴人らの通行には何らの支障がない。それ故右の通路を有する甲地は民法第二一三条第一項にいう公路に通ぜざる土地に該当するものではない。なお、乙地は大井町線戸越公園駅から徒歩数分の近距離にあり駅前通りの商店街に面しており、地価が甚しく高価な土地である。このような土地について被控訴人高橋良雄が国から払下げをされた後である昭和二五年五月二四日制定された建築基準法及び同年一二月七日制定の東京都建築安全条例を基準として民法第二一三条第一項の公路に通ぜざる土地に当たるかどうかを判断し、同条に基づく通行権を認めることは、事後に成立した法律により何らの補償もなく国民の高価な財産権を侵害することになる。そればかりでなく、被控訴人らは昭和二六年甲地の上に現在の建物を増築、新築するに当たり、乙地内にある通路が三、三尺ないし四尺しかないのに、これを四米の幅員がある旨虚偽の申請をして許可を受けたもので、被控訴人らの現住している建物は何れも建築基準法及び東京都建築安全条例に違反する違法建築物であるから、甲地のために必要とする通路を右違法建築物の存在を前提とし、かつ、右法令を基準として認定するならば、違法建築物の存在を是認することになり、自ら法令に違反している者の第三者に対する法令遵守の要求を容れる結果ともなる。従つて、原判決のように、建築基準法及び東京都建築安全条例を基準として囲繞地通行権の及ぶ範囲を定めることは失当である。

証拠<省略>

被控訴人ら代理人は、控訴人の右主張事実中丙地の北西側に幅員一、五尺の通路があつたとの点は否認する。丙地は控訴人主張のように昭和二四年二月八日訴外西山において払下げを受けたものの一部であるが、当時甲、乙地はまだ国の所有であつて甲、乙の区別がなく同年二月二〇日に至つて乙地が控訴人に分割して払下げられた結果甲地がはじめて袋地となつたものである。袋地につき通行権の認められる趣旨は袋地の利用を全うさせようとする公益上の必要から生じたのであり、建築基準法が建物敷地について道路に二米以上接しなければならないとし、東京都建築安全条例が一〇米の路地に二米の幅員を要求しているのもまた公益上の要求であるから、相隣関係において土地の利用を調節するに当つて右法令の規定をしんしやくするのは当然である。また、被控訴人らは法令により幅員二米の通路を必要とすることを理由として六、六尺の通行権を主張するのではなく、甲地が袋路となつた当時からの通路の状況を考慮の上通行権を主張しているに過ぎないと述べた。

証拠<省略>

理由

一、被控訴人らは昭和三〇年一〇月頃控訴人の夫亡松尾秀二から乙地のうち原判決添付図面(以下、図面という。)表示の(1) (2) (3) (4) (1) の各点を結んだ一三坪五勺の範囲について、甲地から公道に出るための通路として、それぞれ地代一カ月金八〇円とする通行地役権の設定を受けたが、松尾秀二の相続人である控訴人において被控訴人らの地役権を争い、かつ、通路を妨害するので右の部分についての被控訴人らの通行地役権の確認と妨害物の除去及び妨害の予防を求める旨主張する。

そこで、この点について考えてみるに、成立に争いのない甲第三号証の一ないし四と原審における被控訴人高橋良雄本人尋問の結果によれば、被控訴人らが昭和三〇年一〇月以降控訴人の夫松尾秀二に対し、甲地から公道への通路となつている乙地の東南側の一部分の土地の使用料として、それぞれ一カ月金八〇円を昭和三二年九月まで支払つてきたことを認めることができるが、原審における証人本田喜平の証言及び被控訴人高橋良雄、控訴人各本人尋問の結果によれば、右使用料は被控訴人らと同じくそれまで右通路を無償で使用してきた訴外本田喜平がその居宅を他に売却するにつき、将来の通路の使用を確保するため、右松尾秀二と一カ月ピース二箱分の使用料の支払いを約定し、被控訴人らもこれにならつて右金額の支払いをしてきたに過ぎないと認められ、他に乙地の係争部分について被控訴人ら主張のような範囲の通行地役権が設定されたことを認めるに足りる証拠はない。してみれば被控訴人らが乙地のうち右に主張する部分について通行地役権を有することを前提とする主たる請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないといわねばならない。

二、つぎに、被控訴人らは予備的請求として、甲地は乙地とともに国有地から分割により払い下げられた結果袋地となつたもので被控訴人高橋良雄は甲地の所有者として、被控訴人高橋春恵は甲地の一部を右高橋良雄との使用貸借により使用している者としていずれも乙地のうち図面表示の(1) (2) (3) (4) (1) の各点を結んだ約一三坪五勺の範囲の土地を従前から公道に通じる通路として使用してきたが、乙地の所有者である控訴人はその範囲を争い被控訴人らの通行を妨害するので、右の範囲につき囲繞地通行権を有することの確認を求めるとともに、妨害物の除去と、妨害の予防を求める旨主張し、仮りに、右の範囲について通行権が認められないとしても建築基準法及び東京都建築安全条例等において公道に通じる通路としては幅員二米以上が要求されていること等をしんしやくして、最小限二米の範囲について通行権が認められるべきであると主張する。これに対する控訴人の主張は、被控訴人らは乙地の東南側図面表示(1) (2) (ロ)(イ)(1) の各点を結んだ範囲の土地及び丙地の北西側で乙地に接する幅員一・五尺の範囲の土地を通路としているから、甲地は袋地でないというのである。そこで、この点について考えてみるに甲地、乙地及び丙地を含む附近一帯の土地が元豊町五丁目一三五番の一の宅地として訴外金子賀舞が所有していたこと、右土地が昭和二二年三月一五日国の所有となり、松尾秀二が昭和二四年二月二〇日乙地を、被控訴人高橋良雄が同年五月一〇日甲地を、それぞれ分割により払下げを受けその所有権を取得したこと、丙地が昭和二四年二月八日(従つて甲、乙両地につき分割による払下げが行なわれる前に)、当時国の所有に属していた元豊町五丁目一三五番の一の土地から分割により払い下げられた土地の一部であること、以上の事実は当事者間に争いのないところであり、被控訴人高橋春恵が昭和二六年一一月頃から被控訴人高橋良雄との間に結んだ使用貸借契約に基づき、甲地のうち東北側の一〇坪余を使用していることは原審における被控訴人高橋良雄本人尋問の結果によりこれを認めることができる。そして、控訴人主張の乙地の東南側の部分については被控訴人らがこれを通路としていることは当事者間に争いのないところであるが、右通路として認容されていた部分が被控訴人ら主張のように、図面表示(1) (2) (3) (4) (1) を結ぶ範囲に及んでいたこと及び被控訴人らが丙地の一部幅員一・五尺の範囲を通路として使用していたとの事実は、いずれも、これを認めるに足りる措信すべき証拠はないところ、民法第二一三条第二項の袋地に当たらないというためには、土地の一部譲渡に際し、若しくはその後において、右譲渡により生じた袋地のために、公道に至るまでの通路として通行地役権ないし借地権等が設定されることによつて、同条の規定により認められる通行権に匹敵するような通路の使用権が確立されているものと認められる場合でなければならないものと解するのが相当である。ところが被控訴人らが乙地の一部を通路として使用することを容認されている関係は、前認定の事実によれば、その権利関係の性質において、到底民法第二一三条によつて認められた通行権に匹敵するものとは認められず、通行を容認された土地の範囲についても、控訴人主張の図面表示(1) (2) (ロ)(イ)(1) を結ぶ部分だけでは、同条によつて甲地のために認められる通行権の及ぶ範囲に匹敵するものでないことは、後に当裁判所が同条に基づき認められる通行権の及ぶ範囲として確定するところと対比して明らかである。従つて、被控訴人らが乙地のうち控訴人主張の部分を前認定のような権利関係によつて通路として使用することを容認されていたということだけでは、甲地が同条第二項の袋地でなくなつたものと解することは相当でなくかえつて、乙地が松尾秀二に払い下げられることによつて(丙地を通路として使用し得ないかぎり)甲地が右の通路以外の部分において公道に通じなくなつたことを控訴人において明らかに争つていないと認められる本件においては、被控訴人高橋良雄は甲地の所有者として、被控訴人高橋春恵は権原に基づく甲地の使用者として、民法第二一三条第二項に基づき、乙地の一部を甲地より図面表示の公道に至る通路として通行する権利を有するものと認めぬばならない。

なお、控訴人は丙地も甲地の囲繞地として被控訴人がこれに通行権を有する旨主張するが、前述のような当事者間に争いのない甲、乙、丙各土地の分割、払下げの経過から考えるとこの主張は理由がないことは明らかである。

そこで、進んで、被控訴人らが民法第二一三条第二項に基づき有する通行権の及ぶ範囲について判断する。現場の写真であることについて争いのない甲第四号証の一、二同第八号証、同第一五号証の一ないし五、同第一七号証の一ないし六、乙第二ないし第八号証、成立に争いのない甲第一一号証、第一二号証の一、二原本の存在と成立に争いのない甲第九号証に当審における証人及川郁夫、同西山栄の各証言、原審における証人金子貞助、同庄司安博、同鈴木旭の各証言のそれぞれ一部及び被控訴人高橋良雄、同控訴人各本人尋問の結果のそれぞれ一部、並びに当審及び原審における各検証の結果を総合すると、甲地及び乙地は終戦当時訴外双葉医化学研究所が使用しており、乙地の丙地に接する部分は図面表示の公道から甲地への通路として一間半以上の幅員をもつて利用されていたが、その後乙地に松尾秀二が住むようになり昭和二三年頃控訴人において乙地の丙地に接する境界線からほゞ四尺以上離れて、これに並行して高さ一尺ないし一・五尺の柾を甲地の近くまで植えたこと、その頃右柾の南西側には貯水槽が埋められ、空地になつており、柾が植えられたことにより前記公道から甲地への通行に何の支障もなかつたこと、昭和三四年頃になつて柾の丈が四尺以上にも繁茂してくるに及んで通路としては狭隘を感じるようになつたが、控訴人は同年右貯水槽を撤去し、柾の一部を除去して乙地のうち丙地に接する幅員約三尺の部分を残し、その南西側に接し建物を新築する計画を立てその旨を被控訴人らに通告してきたこと、以上の事実を認めることができ、この認定に牴触する原審における証人近藤直衛の証言並びに前掲各証人の証言及び本人尋問の結果の各一部は信用できない。甲地、乙地のこのような従前の利用状態に当事者間に争いのない両地の分割の経過、甲地の面積が六〇坪余、乙地の面積が七〇坪余で甲地から公道までの距離が八間余りあること、前掲各証拠によつて認めることのできる丙地には乙地の境界線に沿つてこれから一・五尺の部分に建物があり、乙地には図面表示の(3) (4) の線に沿つて控訴人所有の建物が新築されている現状と建築基準法が建築物の敷地は道路に二米以上接していなければならないとし、東京都建築安全条例が建築敷地が路地状部分によつて道路に接する場合には路地状部分の長さが一〇米までのときは敷地の路地上部分の幅員は二米なければならないと定めている趣旨など、甲地、乙地の従来及び現在における利用関係の客観的状況並びに土地の利用についての法的規制に加えて火災等の危険を考慮して土地の利用をしなくてはならない社会的な要請等、諸般の事情を総合して考察すると、乙地の所有者である控訴人としては丙地に接する境界線から図面表示の(5) (6) の線までの範囲につき甲地から公道への通路として被控訴人らの使用を容認しなければならない義務があるというべきである。

控訴人は甲地、乙地の分割後の法令である建築基準法、東京都建築安全条例を基準として通行権を認めることは事後に成立した法令により何の補償もなく国民の財産権を侵害するもので許されないと主張するが、憲法第二九条第二項の規定は、社会環境の変化に応じて財産権者が通常、当然に忍ぶことが相当と認められる程度の制約によつて惹起される損失は財産権者において当然受忍すべきものであるとの思想を前提として右の程度の制限を立法化することは、これによつて財産権者が損失を被る場合でも、無補償でこれをなし得る趣旨を含むものであり、同条第三項の規定はこの程度を超える特別の公共的原因により財産権を公共のために用いるについては、正当な補償を要する旨を定めたものと解すべきである。この趣旨からすれば、裁判所が民法の規定を適用するに当たつて、民法制定後の社会環境の変化に伴ない財産権者が通常忍ぶことが相当と認められるに至つた制限を考慮してこれを解釈適用することは、憲法第二九条第二項の趣旨にそいこそすれ、同条第三項の趣旨に反するものではないといわねばならない。ところで、建築基準法は、直接には、社会環境の変化に応じて、公共の福祉のために建築の自由につき規制を加えようとするものであつて、相隣地ないし囲繞地の土地利用関係の調整を目的とする民法の規定とは、その見地を異にするものではあるが、前述のような建築基準法及びこれに基づく条例の規制によつて、建築用地としての袋路地の土地所有権の行使に制約を受けることは否定し得ないところであつて、この制約は、現在の市街地における社会環境において土地所有権者が通常、当然忍ばねばならない制限といわねばならない。そして、袋路地を建築敷地として利用するについてかような制限がある以上、その建築用地としての効用をまつとうさせるためには、民法第二一三条第二項に基づく通行権が認められるかどうか及びその及ぶ範囲を決定するについて、前述のような建築基準法の規制をも考慮に入れてこれを判定する必要があり、その結果、通行を受忍すべき立場にある土地所有者が被る制約もまた、結局において、社会環境の変化に伴ない土地所有者が通常、当然に忍ばねばならないこととなつた制限と認めざるを得ない。従つて、囲繞地通行権が認められるかどうか及びその及ぶ範囲を決定するに当つて、裁判所が前述のような建築基準法等の規制を考慮に加えることは、ひつきよう、民法制定後の社会環境の変化に伴ない土地所有者が通常、当然に忍ぶことが相当と認められるに至つた制約を考慮してこれを判断することにほかならないから、この判断の結果、通行を受忍すべき立場にある土地所有者である控訴人が建築基準法等の規制を考慮に加えないで判断する場合に比して不利益を被ることがあつても、憲法の趣旨に反するものではないといわねばならない。それ故、この点に関する控訴人の主張は採用できない。

控訴人はまた、右のような範囲で通行権を認めることが、被控訴人らの違法建築を是認することになり、自ら違法行為をした者の第三者に対する法令遵守の要求を容れることになると主張するが、右のような範囲で通行権を認めることが、直ちに、甲地上に建築基準法等の規制に違反する建物の存在を容認する結果となるものでないことは明らかであるのみならず、そもそも囲繞地の通行権は土地の客観的な利用関係を調節するため法律によつて認められたもので、土地利用者の主観的意図とはかかわりのないものであり、仮りに、袋地に違法建築物があるからといつて、これにより囲繞地の通行権の範囲が考慮されるわけではなく、当裁判所の前示判断も、建築用宅地としての甲地の所有権の行使が建築基準法等によつて制限され、規制されているという事実を建築敷地としての甲地の利用を全うするために、どの範囲の通行権が認めらるべきかを判断するについてしんしやくしたというにとゞまり、甲地上に現在建築されている被控訴人らの家屋の存在を考慮して通行権の範囲を確定したものではない。従つて、この点に関する控訴人の主張も採用できない。

そして、控訴人は被控訴人らの乙地についての通行権を争つているし、また右通行権の認められる図面表示の(1) (2) (5) (6) (1) の各点を結んだ範囲に控訴人が長さ一九尺一寸四分の板塀とバラツクの物置を建築していることは控訴人の認めるところであり、かつ、前掲各証拠によると控訴人が将来被控訴人らの右の部分の通行を妨げるおそれも充分うかゞうことができるから、被控訴人らの控訴人に対する乙地のうち図面表示の(1) (2) (5) (6) (1) の各点を結んだ範囲についての通行権の確認と、被控訴人らの右部分の通行を妨げて右土地上に存在する板塀及び物置の東南壁より左へ間口約二尺五寸奥行約六尺の部分(この部分が右土地上にあることは控訴人において明らかに争つていない。)の収去並びに将来右土地内に工作物を築造したり、障害物をおいたりなど被控訴人らの通行の妨げとなるような行為の禁止を求める各請求は正当であり、その余の請求は失当である。従つて、右と同趣旨にでた原判決は相当であつて本件控訴、附帯控訴ともに理由がないから民事訴訟法第三八四条によりいずれも棄却することとし、訴訟費用の負担については同法第八九条第九二条を適用し、なお、原判決には被控訴人らの主たる請求及び予備的請求の一部を棄却しながら、これを主文に表示しなかつた明白な誤謬があるから、同法第一九四条により、これを更正することとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 白石健三 浜秀和 町田顕)

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